STORY

色神遣い(しきがみつかい)

概要
日本の江戸時代のような奇妙な世界。慎ましくも逞しく暮らす町人達の陰で、不可思議な力を持つ者達が暗躍していた。彼らは色彩の持つ超常の力を操り、色神遣い(しきがみつかい)と呼ばれていた。
※色神(しきしん)とは一般に色覚異常の意ですが、本作品では「しきがみ」と読む造語として扱っております。
2013/2/1-
集合絵
人物

柳彩(りゅうさい)/30代/男

町外れに暮らす冴えない絵師、その正体は色神遣い。二人の小間使いを住まわせているが、実は二人とも色神。
性格はのんびり屋で絵以外は何をやっても不器用、小間使い達が居なければ日常生活がこなせるかどうかも怪しい。
「先生あの細い目でよく絵が描けるよなあ、ちゃんと見えてんのか」と言われるほど目が細い。
幼少期、路上を彷徨う名も無き孤児であった彼は、誤って彼の師匠の戦いに巻き込まれ、魂を半ばもぎ取られてしまう。責任を感じた師匠は彼の命を繋ぎ止める為、色神「裏葉柳(うらはやなぎ)」を彼の魂と同化させた。否が応にも色神と感応する存在になってしまった彼に師匠は「柳彩」の名を与え、色神を操る術を教えた。柳彩が色神の連続多重使役に長ける人間離れした精神構造を持つのは、この所以である。
真朱はその事を知らされていないが、彼が他の色神遣いより自分達に近い存在である事は感じ取っている。
竹筒を連ねた容器に筆と調合した絵具を入れて持ち歩き、色神を行使する際は「玖色(きゅうしき)、木蘭色(もくらんじき)」「参拾伍色(さんじゅうごしき)、月白(げっぱく)」というように色番・色名の詠唱と併せて該当の色を描く。
柳彩(中央)

(はな)/外見20代半ば/女

柳彩の小間使いその一。主人のうっかり具合はもう諦めた様子の落ち着いた物腰。語気を荒げる事は無いがさらりと毒吐く。
その正体は色神「花緑青(はなろくしょう)」。連続使役十年の高位色神で、柳彩が全力を注げば最強の力を発揮すると思われる。人間以上の知能で人化の術を完璧にこなし、複数の術を使い分け、下位の色神を使役さえする。
柳彩は普段「花さん」と呼び、色神として力を行使させる時のみ「花緑青」と呼ぶ。立場として行使する側ではあるが、精神存在として、魂として、柳彩はこの存在を尊敬し先輩のように頼っている部分がある。花は柳彩の事を普段「柳彩先生」、色神として振舞う時は「主(あるじ)」と呼ぶが、ごくプライベートな時はたまに「柳彩」と呼ぶ。

柳彩『頼みましたよ。佰色(ひゃくしき)、花緑青(はなろくしょう)』
花(右側) 花の髪型)

真朱(まそお)/外見13~14歳/女

責任感が強く小うるさい小姑のようだが、根は素直。柳彩がのんびりすぎ、花が半ば諦めているので、真朱がせかせかと立ち回る事でちょうどバランスが取れている。何かとだらしない柳彩をよく叱り付けている。
連続使役三年の高位色神。炎の術を多数扱う。柳彩が比較的新しく入手した色神だが急成長しており、その強さはまもなく花に迫るという。しかし外見通り精神構造が若く、差し迫ると柳彩の指示無しに、又は指示に逆らって力を行使してしまう事がある。

柳彩「いけません、真朱!」
真朱「柳先生に…触るな!!」
真朱(左側)
設定

色神(しきがみ)

色神(しきがみ)とは、色彩の持つ力と術者の精神力により練り上げられたエネルギー体。顕現されると術を放って消えるだけの下位存在から、知能を持って術者に仕える高位存在まで様々。
色神は術者が各々作り出すものであり、同じ色には同じ色神が宿るが、同じ色神でも術者によって、正確には注がれた思念によって別の個体となる。つまり「色」と「思念」の2つが鍵となり色神の同一個体を定義する。
一説には、同じ個体を術者から術者へ受け継ぐ儀式も存在するという。
色神は使役時間が長いほど術者との結びつきが強くなり、その能力を最大限発揮できる。しかし色神の長時間使役は著しく精神力を消耗する為、一日単位で使役を続けられるような術者は稀である。伝承には、睡眠中や心神喪失状態においても潜在意識によって使役を続ける術者もいるとされるが…。
色神遣いは稀有な存在だが、その多くは絵師、染物師、表具師など色に関わる生業を営む。
エピソード
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『柳』彩

 あらゆる色神、あらゆる色彩を飲み込み混沌と化してゆく巨影に立ち向かう柳彩。
「花、真朱、すみません。
 私は「私自身」を使って、あれを止めようと思います。
 術者が死んだ場合、思念供給を絶たれた色神が永らえることは難しいでしょう。つまり貴女方も消滅することになります。それでも、全てを注いでも、あれは止めねばならない」
「…柳彩。
 私共はあなたの力、あなたの一部。何時如何様に使おうと、あなたの自由。
 この現世(うつしよ)に姿を得、言葉を発したその時から、ずっと変わらないことです。
 いつか誰かが私共の色を呼び、色神として顕現しても、それらは今の私共とは違う存在…理解しています。それでも、私共が存在したことは無意味ではありません。私共は生き、死ぬことができるのです。そう、人間のように」
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 花と真朱への思念供給を止め、莫大な精神力の全てを自分へと向ける柳彩。自らの魂と同化した色神「裏葉柳」にその力を注ぎ、巨大な龍へと姿を変える。柳(りゅう)はすなわち、龍(りゅう)であったのだ。

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